茶園土壌における炭素貯留量を測定

茶園1haあたりでは約367トン(換算値)のCO2を貯留する計算に。詳細を茶業技術研究発表会(11月19日)にて発表。

株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、茶栽培による茶園土壌の炭素貯留量の測定を行いました。その詳細を、11月19日(火)に島田市民総合施設プラザおおるり(静岡県島田市)で開催される茶業技術研究発表会(事務局:日本茶業技術協会)で発表いたします。
なお、本研究は、農林水産省「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用ステージ24009)」により実施しました。

≪経緯≫
当社は、主に飲料用原料に適した緑茶(荒茶)を生産する茶産地育成事業を九州地方中心に展開しており(約860ヘクタール規模)、今後も新たな産地を立ち上げていく予定です。その一方で、経済的栽培年数は30~40年と言われる茶の木にとってCO2の固定はもちろん、その栽培の土台となる茶園土壌も堆肥や有機物の投入により、炭素の貯留が期待できると考えられます。そこで、茶産地育成事業の新産地から幾つか生産中の茶園を対象に土壌炭素の貯留量を測定しました。
なお、茶の木(茶樹)の植物としての二酸化炭素(CO2)の吸収・固定の数値化については、すでに同学会(2008年11月開催)にて発表しました。

≪研究内容および結果≫
栽培年数の異なる茶園土壌を対象に、うね間(作業通路)と樹冠下(茎や葉を含む木の真下)に分けて、表面土から深さ30cmまで、土壌採取を行いました。採取した土を乾燥して小石などを取り除き、重さや炭素率を測定して各茶園の土壌炭素含有量を計算し、比較しました。
その結果、幼木期(若い茶園)の茶園土壌では、土壌炭素の増加が見られなかったものの、成木期(一般的に6~8年から)に入ると、土壌炭素の貯留は明らかに増えました。栽培初期の幼木園に比べ、成木園の土壌炭素含有量(平均値)は約2.5倍多くなりました。今回の調査において、30年間の栽培管理で、新たに10アールあたり約10トンの炭素が貯留されました。すなわち、1ヘクタールの茶園土壌では、約367トンのCO2を貯留するものと思われます。(1トン炭素=3.67トン二酸化炭素)(1ヘクタール(ha)=100アール(a))

図1. 圃場(ほじょう)全体の土壌炭素含有量

今回の研究では、黒ボク土茶園土壌(黒い土)の炭素貯留量を算出しましたが、土壌の種類や栽培管理の違いによって、茶園土壌への炭素貯留量などが変わってくることも考えられます。引き続き、ほかの産地で同様な調査を行ってまいります。
当社が推進している茶産地育成事業では、遊休地を集約・活用して新たな茶園を造成し、管理や摘採まで機械化による省力化を図っています。今後は茶園の造成から摘採、荒茶の生産に至る過程での、CO2の吸収・固定だけでなく排出についても明確化し、茶産地育成においてもさらなる環境に配慮したビジネスモデルを目指していきたいと考えています。