株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、静岡県立大学 食品栄養学部の渡辺達夫教授との共同研究で、「炭酸水による体温低下抑制作用」について、ヒトでの効果および温度や刺激の受容体(※2)による作用の解明を行いました。なお、研究の詳細は日本農芸化学会2012年度大会で3月24日(土)に発表し、同大会にてトピックス賞を受賞いたしました。
≪経緯≫
炭酸飲料は口腔内で刺激と爽快感をもたらす嗜好飲料として広く飲まれていますが、その機能性に関する報告はわずかです。一方、ショウガなど刺激を有する食品成分には体を温める効果が知られています。このことから、炭酸水の刺激に着目し、炭酸水の飲用が体温に及ぼす影響について検証しました。
≪研究内容≫
炭酸水のヒトにおける体温への効果検証として、冷涼な環境下(20.5~22.4℃)で、冷え性の女性7名(以下、被験者)を対象に、ガスボリュームの異なる冷やした炭酸水と水を飲用していただき、飲用前および飲用後(2分、4分、6分、8分、10分、20分、30分、40分)の手の皮膚温を測定しました。また、炭酸水の刺激の働きを明らかにするために、温度や刺激の受容体であるTRPV1(※3)、TRPA1(※4)に着目し、それらを発現させた細胞の応答も確認しました。
≪結果≫
冷涼な環境下で試験開始後、被験者の手の皮膚温が低下しました。炭酸水(強)と水を飲用した被験者を比較して、炭酸水(強)で手の皮膚温の低下が有意に抑制されました(図1)。温度や刺激の受容体については、TRPV1では活性を示さず、TRPA1に活性を示しました。
この結果、炭酸水の刺激がTRPA1を活性化させ体熱産生を促進し、かつ放熱を抑制したことによって、体温低下抑制効果が示唆されました(図2)。
(※1)本大会で初めて公表する新規の“学術的あるいは社会的にインパクトのある”発表で、報道されるにふさわしいと広報委員会ならびに大会実行委員会プログラム委員会が判断し選定されたもの
(※2)生物の体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みをもった構造
(※3)トウガラシの辛味成分(カプサイシン)や43℃以上の熱などによって活性化される受容体
(※4)ワサビの辛味成分(アリルイソチオシアネート)のようにツーンとくる辛味や、17℃以下の冷たい刺激により活性化される受容体
当社では、自社製品の香味や安定性および健康性に関する基礎的な研究を行っております。おいしさはもちろん、安全性や機能性など、食に対する関心がますます高くなるなかで、さまざまな素材の可能性を追究すべく、今後も新しい価値を創造し続けてまいります。