株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、NPO日本健康増進支援機構の花粉曝露試験施設(所在地:和歌山県有田郡有田川町)にて、Enterococcus faecalis(エンテロコッカス フェカリス)(以下、フェカリス菌(※))含有乳性飲料のスギ花粉に対する症状緩和効果を確認しました。この試験結果の詳細は、3月発刊予定の「薬理と治療(JPT)Vol.40 no.2 2012」(ライフサイエンス出版)に掲載されます。
(※)ヒトの体内から抽出して加熱処理を行い乾燥させた乳酸球菌です。他の乳酸菌よりも免疫調整作用が強いことや、菌体そのものが微小で1,000億個単位で摂取することが容易であり、加熱殺菌処理をした菌でも、これまでにヒトを対象とした試験において、整腸作用、アトピー性皮膚炎改善作用、接触性皮膚炎改善作用などが確認されています。
≪ 経緯 ≫
季節性アレルギー性鼻炎には、スギ・ヒノキ科、イネ科、キク科(ヨモギ、ブタクサ)などの花粉による花粉症があり、患者数は年々増加しています。近年、これら花粉症の食品による症状緩和効果についてヒトでの効果を検証する試験が多数行われ、乳酸菌などによる効果が報告されています。ところで、薬品および食品の効果を検証する方法としては、近年、花粉の曝露室を利用した試験も多く行われています。この方法では人工的に一定数の花粉を被験者に散布することが可能であり、天候、地域、時期などの環境条件により花粉飛散量にバラつきがある自然曝露の試験よりも再現性に優れる利点があります。
そこで今回、スギ花粉の非飛散期に花粉曝露試験施設を使用し、フェカリス菌含有乳性飲料のスギ花粉症に対する有効性を評価しました。
≪ 研究内容 ≫
今回の試験は、NPO日本健康増進支援機構の花粉曝露試験施設にて、2011年10月から12月に行いました。
スギ花粉症患者20名にフェカリス菌含有乳性飲料(1本200ml当たりフェカリス菌1,000億個含有)を、毎日1本、2ヵ月間飲用していただきました。そして、飲用開始前および飲用後の曝露室内でのスギ花粉に対する自覚症状、曝露試験後5日間の自覚症状を、「鼻かみ回数」、「鼻づまり」、「日常生活の支障度」、「眼のかゆみ」、「流涙」、「眠気」などの項目で評価しました。
≪ 結果 ≫
曝露室内での症状は「鼻かみ回数」、「眼のかゆみ」で、飲用開始前と比較して飲用後で有意な差が認められ、「鼻づまり」、「流涙」では、改善する傾向が認められました。
曝露試験後5日間の症状は、「日常生活の支障度」、「眼のかゆみ」、「流涙」、「眠気」で、飲用開始前と比較して飲用後で有意な差が認められ、「くしゃみ回数」、「鼻づまり」では、改善する傾向が認められました。
p値:結果が偶然の産物であるかを示す確率。p値が0.05(5%)未満であれば結果は偶然ではないと考え、有意な差がある、0.1(1%)未満であれば有意ではないが改善傾向があると解釈する。
以上の結果より、フェカリス菌含有乳性飲料を毎日飲用することにより、スギ花粉飛散時期の症状緩和が期待されました。
当社では、当社製品の香味や安定性および健康性に関する基礎的な研究を行っております。永続的な成長が期待される企業にとって、新しい価値を創造し続けることこそが成長の原動力であり、当社の研究開発はその根本を担っております。おいしさはもちろん、安全性や機能性など、食に対する関心がますます高くなるなかで、日本の伝統文化のなかで用いられてきた緑茶を中心とする、さまざまな素材の可能性を追究すべく、今後も研究を行ってまいります。