株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、静岡県立大学薬学部の鈴木隆教授との共同研究で、緑茶に含まれているカテキンの一種・エピガロカテキンガレート(EGCg)が、新型インフルエンザの原因となるブタ由来ウイルス(H1N1)を含めた3種の型のウイルスに対して感染阻害作用を示し、型に関係なくウイルス感染予防に有効であることを細胞実験で確認しました。この結果から、緑茶がインフルエンザの予防に有効であることが改めて示唆されました(本件に関連し特許出願済み)。
≪ 経緯 ≫
インフルエンザウイルスは感染力が強く、また容易に変化することから、インフルエンザは毎年流行を繰り返しますが、近年ではブタ由来の新型インフルエンザウイルス(H1N1)が大流行し、大きな問題となっています。これまでに緑茶でうがいをすることが、インフルエンザの予防に効果があると一部報告されていますが、このインフルエンザ予防作用には、緑茶に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンが大きな役割を担い、カテキンの中でもEGCgが最も強い活性をもつことが明らかとなっています。
今回、EGCgがウイルスの亜型に関係なく、新型インフルエンザウイルスに対しても抗ウイルス作用を示すかどうかを試験しました。
≪ 研究内容 ≫
新型インフルエンザウイルス(H1N1)を含む3種のウイルス液と緑茶から抽出したEGCgをそれぞれ混合し、これを実験用の細胞に添加して感染させました。この細胞を一定時間培養し、インフルエンザウイルスに感染した細胞を数えました。EGCgと混合していないウイルス液を細胞に添加した場合の感染細胞数を100%として、感染細胞数が50%(半分)に抑制されるEGCgの濃度を算出しました。
≪ 研究結果 ≫
試験の結果、EGCgはアマンタジンより低い濃度でウイルスの感染抑制作用を示しました。また急須で入れた一般的な緑茶のEGCg濃度は5,000~7,000μMと報告されていることから、1,000倍以上に希釈した濃度で新型インフルエンザウイルスを含めた3種のウイルス感染を半分に抑制することが明らかとなりました。
・A(H1N1)型は新型インフルエンザ患者より分離した臨床株、A(H3N2)型は季節性インフルエンザ患者より分離した臨床株を用いた。A(H5N3)型は鳥から分離した弱毒性の株を用いた。
・グラフは細胞中のウイルスに緑茶成分を加えていないものと比較して50%抑制する濃度を示し、値が小さいほど抗インフルエンザ作用が強いことを示す。
※「アマンタジン」:インフルエンザの予防・治療に用いられる薬剤
このことから、緑茶に含まれるEGCgは、型に関係なくインフルエンザを予防できる可能性が示され、改めて緑茶がインフルエンザの予防に有効であることが示唆されました。