株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、大阪市立大学大学院医学研究科の片岡洋祐講師、医療法人順風会の宇都宮一泰理事長、介護老人保健施設れんげ荘の片岡喜由施設長との共同研究で、緑茶中の主なアミノ酸である「テアニン」を多く含んだ緑茶抹カプセルの長期的な摂取によって、高齢者の認知機能の低下が抑制されることを確認し、これにより認知症の予防効果の可能性が示されました。この結果の詳細は、5月22日(金)に長崎市茂里町ブリックホール(長崎県長崎市)で開催される第63回日本栄養・食糧学会にて発表いたします。
≪ 経緯 ≫
これまで当社の研究において、緑茶中の主なアミノ酸である「テアニン」に、記憶などを司る脳神経細胞の保護作用があること、ならびにそのメカニズムを細胞および動物実験レベルで明らかにしてきました。一方、人での応用として、2001年より実際に認知症または軽度認知症の方にテアニンを豊富に含む緑茶抹を摂取していただき、認知症の進行にどのような影響を与えるかを検証してきました。これまでの予備的な研究では、テアニンを豊富に含む緑茶抹の摂取により、軽度認知症あるいは健常な高齢者において認知機能の低下を抑制していることを少人数ながら確認できました。
今回、これらの結果を受けて軽度の認知症あるいは健常な高齢者を選抜して被験者数を増やし、テアニンを豊富に含む緑茶抹の摂取が1年間の認知機能に及ぼす影響を検証いたしました。
≪ 研究内容 ≫
本人または家族から同意を得られた方で、改訂版長谷川式簡易老人知能スケール(※)の得点が認知症診断の基準値である20点を超える点数(21点以上)であったボランティア(平均年齢82歳)を被験者として選抜し、緑茶抹を詰めたカプセルを1日12カプセル摂取していただきました。これは、緑茶抹約2,040 mgに相当し、1日当たりテアニン約47.5 mg、カテキン約 168 mg摂取することに相当します。このカプセルを1年間通して摂取していただき、改訂版長谷川式簡易老人知能スケールを毎月測定して認知症状の進行の程度を調べました。
(※)改訂版長谷川式簡易老人知能スケール:簡単な質問に答えてもらい、その正解数で認知症の程度を評価する方法。30点を満点とし、20点以下であれば認知症の疑いがあるとされています。
≪ 結果 ≫
プラセボカプセルを摂取した群では得点が徐々に低下したのに対し、緑茶抹カプセルを摂取した群では得点が改善し、7ヵ月後より知能スケール得点の平均値で有意な差が認められました。
知能スケールの得点推移
知能スケール(点)
摂取期間(ヵ月)
*:プラセボ群とテアニン高含有緑茶抹群の有意差
以上の結果より、今回の研究で、テアニンには現代の高齢化社会で問題となっている認知症に対して、その進行の軽減、つまり認知症の予防効果を期待できることを確認しました。
テアニンは、緑茶に特有のアミノ酸成分で、新茶や玉露、抹茶に多く含まれます。緑茶に浸出されるテアニン量は、茶葉の種類や抽出温度、抽出時間で大きく変化しますが、今回の研究で使用したカプセルに含まれている1日当たりのテアニン量約47.5 mgは、一般的な茶道用の抹茶を1杯当たり2g分を使用して2杯程度で摂取できる量であり、意識的に緑茶を飲用することで、摂取が不可能な量ではありません。
当社はお茶を中心とした食品を通じ、幅広く美容や健康との関連について研究を進めております。未知の可能性を秘めているさまざまな有効成分の研究とともに、その活用方法について、今後も提案し続けてまいります。