株式会社伊藤園(社長:本庄八郎 本社:東京都渋谷区)は、長崎大学と共同で、茶の栽培・摘採などへのリモートセンシング技術の応用について試験いたしました。その詳細を、11月26日(水)に鹿児島県市町村自治会館(鹿児島県鹿児島市)で開催される茶業技術研究発表会(事務局:日本茶業技術協会)で発表いたします。
≪経緯≫
当社は2001年より、飲料用原料に適した緑茶(荒茶)を生産する茶産地育成事業を九州地方中心に展開していますが、これまで契約栽培茶園を含めて約540ヘクタールの規模になっています。今後も新たな産地を立ち上げていく予定ですが、その一方で、安定した品質の茶葉の生育・生産や生産時期の効率的な工場稼働のためには、摘採時期の適正な判断や管理が重要となります。この摘採時期の判断には熟練者の経験に委ねる方法や新芽の成分分析を行う方法などがありますが、成分分析については煩雑なサンプリング作業が伴っていました。そこで、水稲などで一部実用化されている“リモートセンシング技術”を茶の栽培・管理に応用し、摘採時期を誰でも簡易に判断できる可能性を探りました。
≪研究内容および結果≫
リモートセンシング技術は衛星や飛行機、地上での各種センサーなどを用いて、広域的に、対象物を破壊せずに、肉眼では捉えられない情報を感知することができます。例えば、植物の葉は主に青色、赤色の光は吸収しますが、目に見えない近赤外光は強く反射する特徴があります。そこで、反射している近赤外光と吸収している赤色光を測定することにより、植物の葉の生育状態がわかると考えられています。
今回の調査は、2004年から主に静岡県御前崎市にある茶園(やぶきた種)にて、地上でデジタルカメラを改良したセンサー使い、主に一番茶期の茶園を1~2週間前から摘採直前まで日を追って測定しました。得られた測定データは正規化植生指数(※)を算出して、実際の新芽の生育状態との比較を行いました。
(※)近赤外光から赤色光の差を、近赤外光と赤色光の和で割った数値
この調査の結果から、茶園の立地条件などにより数値に変動はあるものの、デジタルカメラを応用したリモートセンシング技術で茶の新芽の生育状態を確認できることがわかりました。今後は、生育状態の測定条件のさらなる検討と精度の向上を行い、実用的な装置の開発を検討してまいります。将来的には、当社が各地で推進している茶産地育成事業に実際に実用化し、茶葉の品質向上や生産コスト低減に活用することを目指します。
茶産地育成事業:
当社は2001 年より、宮崎県都城地区で都城農協と協同した事例を皮切りに茶産地育成事業を立ち上げています。この事業は、「お~いお茶」に適した飲料用原料の安定調達と生産の効率化、さらに生産農家の育成のために積極的に展開しております。スケールメリットを活かした経営を基本とし、機械化による省力化を図り、生産や加工について『お茶の伊藤園』独自の技術を提供することで生産コストを抑え、相場の乱高下に左右されず、生産された茶葉全量を当社が購入することを特長としています。2007年には都城農協が茶葉を一次加工する荒茶工場を建設し、本格的な摘み採り、生産が始まっています。
また、2006 年秋には大分県、臼杵市、杵築市とともに事業協定を締結しました。自治体が参加する初めての事例です。
こうした新たな産地をつくる茶産地育成事業は現在4県6地区(すべて九州地方)に広がっていますが、今後とも、全国で茶園総面積1,000 ヘクタールを目標に、茶産地育成事業に積極的に取り組んでまいります。