株式会社伊藤園(社長:本庄八郎 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、株式会社TTC(社長:山本哲郎 本社:東京都渋谷区)との共同研究で、にんじん100%飲料の摂取がコラーゲンやヒアルロン酸の産生促進に作用し、肌の保湿効果に有効であることを確認しました。
あわせて、色素沈着を抑制する作用についても確認し、この研究成果の詳細を、3月26日(水)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された日本薬学会第128年会で発表しました。この結果から、にんじん100%飲料を摂取することにより、「肌の乾燥」「肌のうるおい」が改善されるなどの美肌作用が期待できます。
≪ 経緯 ≫
β-カロテンは、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種で、体内に入ると小腸から吸収され、皮膚や粘膜の健康維持などに効果があるビタミンAに変化します。さらに抗酸化作用など、有益な生理作用も期待できる成分です。一方、そのβ-カロテンを多く含んでいることで知られるにんじんは、気軽に摂取できる飲料として多く市販されています。
当社では、にんじんの機能性に関する研究を継続しており、すでに、油を含む食事とともに摂取する条件で、生のにんじんより茹で調理したにんじんでβ-カロテンの吸収性が上昇することを確認しています。また、昨年9月には、茹でて搾ったにんじん飲料の飲用が、炒め調理や茹で調理したにんじんより効率的にβ-カロテンを吸収できることを確認し、日本食品科学工学会にて発表しました。
今回は、にんじんの機能性の中でも特に肌に対する効果について、にんじん100%飲料とミネラルウォーターの摂取による比較を行い、どのような影響があるかを検証しました。
≪ 研究内容 ≫
20歳以上39歳以下の健常な女性33名を対象とし、β-カロテンを約13.2mg(200mlあたり)含むにんじん100%飲料と、ミネラルウォーターを、それぞれ1日400ml、9週間に渡って摂取させました(にんじん100%飲料摂取群16名、ミネラルウォーター摂取群17名)。摂取2、3、4、5、9週間後に色素沈着(摂取1週間後に紫外線照射したもの)、角質水分量、粘弾性、キメ面積率を測定し、摂取4、9週間後には肌および排便に関するアンケートを実施しました。また、試験管内でヒト細胞を用いたコラーゲンおよびヒアルロン酸の産生量を測定しました。
≪ 結果 ≫
肌の水分量を測定した結果、にんじん100%飲料摂取群の摂取前後での比較で有意な増加が見られました(図1参照)。また、アンケート結果から、「肌の乾燥」「肌のうるおい」「化粧もち」など美肌に関連する複数の項目で、にんじん100%飲料摂取群のほうがミネラルウォーター摂取群より多く改善を実感していることを確認しました(図2参照)。
《図1》にんじん飲料の肌への影響 (水分量の推移)
※角層水分量の指標となる静電容量を測定したもの
《図2》肌に関するアンケート(摂取前と比較した摂取開始9週間後におけるスコア)
※アンケートは、「1:良くなった、2:やや良くなった、3:普通・変化なし、4:やや悪くなった、5:悪くなった」の5段階で回答していただき、にんじん100%飲料摂取群、ミネラルウォーター摂取群それぞれの平均値を算出したもの。数値が低いほど、改善実感度合いが高い。
紫外線照射による色素沈着の試験では、紫外線照射1週間後の肌のL値(肌の明度、値が高いほど白く明るい)は、ミネラルウォーター摂取群と比較して、にんじん100%飲料摂取群で高く、メラニン値(メラニン色素の量)では低い傾向が見られました。さらに、皮膚細胞を用いた試験でもコラーゲン産生促進やヒアルロン酸産生促進効果が確認でき、肌の保湿効果があることも認められました。また、アンケートでは、排便回数の増加や便形状の軟化傾向が見られました。
以上の結果から、にんじん100%飲料の摂取により、肌にうるおいを与え、肌への色素沈着を抑制して明るい肌を保ち、さらにお通じを良くすることで美肌効果をもたらすことが期待されます。