株式会社伊藤園(社長:本庄八郎 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、にんじんに多く含まれているβ-カロテンは、生のにんじんよりもゆでたにんじんからの方が体内への吸収率が高いことを確認しました。この結果の詳細を、5月27日(土)に京都府立大学(京都府京都市)で開催される、第444回 日本農芸化学会関西支部例会にて発表いたします。
≪ 経緯 ≫
β-カロテンはにんじんやかぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれていますが、中でも100gあたり7.7mg(※)含有するにんじんが群を抜いています。にんじんは一般的には生もしくは調理されて食卓に上りますが、現在ではゆでた(ブランチングされた)にんじんを主原料にした野菜飲料が広く販売されるなど、非常に身近になっています。
(※)出典「五訂増補日本食品標準成分表2006」
このβ-カロテンは体内に入ると小腸から吸収され、必要な分だけビタミンAに変化します。不必要な分はそのまま体外に排出されるため、ビタミンAの過剰摂取という心配がないという利点があります。今回、にんじんの状態(生もしくはゆでたもの)により、β-カロテンの体内への吸収率に差があるのかどうかを検証しました。
≪ 研究内容 ≫
24~41歳の健常な男性8名を無作為にIとIIの2群に分け、「二重盲検・クロスオーバー方式(※)」により、前日午後9時以降は水以外の飲食を禁止し、試験当日午前8時半より開始しました。試験食摂取前に採血を行い、I群には食事とともに「ゆでていない生のにんじん破砕物」、II群は食事とともに「ゆでたにんじんの破砕物」を10分以内に摂取させました。採血は食後2、4、6、8、10時間の計5回行い、試験開始5時間後には低脂肪・低カロテノイドの食事を摂取させました。
2週間後、I群は「ゆでたにんじんの破砕物」、II群は「ゆでていない生にんじんの破砕物」を用いて同様の試験を行い、血中β-カロテン、ビタミンA、脂質の測定を行いました。
(※)一定期間後にそれぞれの群の対象物を交換する方式
≪ 結果 ≫
「ゆでていない生にんじんの破砕物」と「ゆでたにんじんの破砕物」それぞれの摂取後10時間までの血中β-カロテン濃度変化量を比較したところ、「ゆでたにんじんの破砕物」の方が高いことが確認されました。とくに、8時間後では血中濃度の差が1.6倍となりました。また、それぞれの10時間後までのβ-カロテン血中濃度のAUC(※)を比較すると、「ゆでていない生にんじんの破砕物」よりも「ゆでたにんじんの破砕物」の方が34%高く、吸収率が高まることが確認されました。一方で、ビタミンAや脂質については両群で差は認められませんでした。
これらのことから、食事とともににんじんを摂取する際、生の状態よりもゆでる(ブランチングする)ことによって、にんじんに含まれているβ-カロテンの体内への吸収率が高まることが示唆されました。
(※)Area Under the Curve(曲線下面積)。経時的な増加量の面積を表す