株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、筑波大学(医学医療系 磯部和正講師)との共同研究で、野菜汁100%飲料およびビタミン強化型の野菜・果実ミックスジュースの継続的な摂取による抗抑うつ・抗不安効果について確認しました。この試験結果の詳細を、英文誌「Journal of Family Medicine and Community Health」に発表しております。また、6月4日(木)、大阪国際会議場(大阪府大阪市)で開催された「WPA Regional Congress 2015」で発表いたしました。
≪経緯≫
日本ではうつ病患者が300万人いると言われ、社会問題となっています。
高齢者を対象としたコホート研究から、うつ病を発症している方は、発症していない方よりも野菜の摂取量が少ないことが報告されています。野菜にはカロテノイドやビタミンなど有用な栄養成分が含まれており、これらを十分に摂取することでうつ病を発症するリスクが低減される可能性が考えられます。
そこで今回、毎日の食事に加え、野菜汁100%飲料またはビタミン強化型の野菜・果実ミックスジュースで野菜の栄養を補うことにより抑うつ状態・不安状態の改善が期待できると考え、臨床試験を実施しました。
≪研究内容≫
抑うつぎみ(抑うつ尺度(BDIスコア※1)11点以上、状態-特性不安尺度(STAIスコア※2)レベル3以上)である健常な25~60歳の男女60名(以下、被験者)を、野菜汁100%飲料を1日1本摂取する群(以下、野菜汁100%飲料群)、野菜・果実ミックスジュースを1日1本摂取する群(以下、野菜・果実ミックスジュース群)、飲料を摂取しない群(以下、コントロール群)の各20名ずつに分け、コントロール群以外の2群には飲料を12週間摂取していただきました。摂取前と4、8、12週間摂取後に被験者のBDIスコアおよびSTAI-1スコア(状態不安※3)、STAI-2(特性不安※4)スコアを比較しました。
≪結果≫
BDIスコアでは、摂取前と比較して野菜汁100%飲料群および野菜・果実ミックスジュース群で12週間摂取後に有意な低下(改善)が確認され、特に野菜汁100%飲料群ではコントロール群と比較しても有意な低下(改善)が確認されました(図1)。
STAI-1では、摂取前と比較して野菜汁100%飲料群で4週間摂取後、12週間摂取後に有意な低下(改善)が確認され、野菜・果実ミックスジュース群で12週間摂取後に有意な低下(改善)が確認されました(図2)。特に野菜汁100%飲料群の12週間摂取後ではコントロール群と比較しても有意な低下(改善)が確認されました。
STAI-2では、摂取前と比較して野菜汁100%飲料群で12週間摂取後に有意な低下(改善)が確認され、野菜・果実ミックスジュース群で8週間摂取後、12週間摂取後に有意な低下(改善)が確認されました(図3)。
従って、野菜汁100%飲料、ビタミン強化型の野菜・果実ミックスジュースの継続的な摂取により抑うつ度、不安度が有意に改善されたことが示唆されました。野菜汁100%飲料、野菜・果実ミックスジュースを継続摂取することが、ストレスなどによる軽度の抑うつ状態や不安状態の改善に有効であると考えられます。
今後は、メカニズムの解明に向けてさらなる研究を進めてまいります。
※1 BDI(Beck Depression Inventory)スコア:アーロン・T・ベック博士によって考案されたもので、抑うつの程度を客観的に測る自己評価表です。スコアが低いほど抑うつ度が低いことを表します。
※2 STAI(State-Trait Anxiety Inventory)スコア:チャールズ・D・スピルバーガー博士らによって考案された自己評価型不安尺度で、状態不安と特性不安の両方の測定が可能です。スコアが低いほど不安度が低いことを表します。
※3 状態不安:一過性の不安状態
※4 特性不安:不安になりやすい性格傾向