抹茶の認知症予防効果を検証する臨床試験を実施

ヒトを対象とした研究で抹茶と脳内のアミロイドβ量との相関を解析する世界初の研究

株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)と株式会社島津製作所(社長:上田輝久 本社:京都府京都市)、筑波大学発ベンチャーの株式会社MCBI(社長:内田和彦 本社:茨城県つくば市)の3社は共同で、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を対象にした臨床試験「抹茶の認知機能低下抑制効果を評価する試験」を行うことで合意しました。抹茶を摂取することで認知機能低下の抑制がみられることを明らかにすることで、社会問題化する認知症の予防に貢献することを目指してまいります。

厚生労働省の発表によると、2025年には65歳以上の認知症高齢者の数が約700万人(5人に1人)に増加すると予測されており、「認知症予防」は喫緊の社会的課題となっております。

抹茶は古くから日本国内において親しまれてきた飲み物であり、その成分であるテアニンはストレス緩和や睡眠改善に効果があると報告されています。また、カテキンは抗酸化作用を有し、認知機能の低下抑制に効果があると報告されています。

本臨床試験では、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)およびプレクリニカル期(プレMCI)の被験者を対象に「抹茶を摂取することで認知機能の改善がみられるか」について検証し、飲料を含めた食事など生活習慣の改善による認知症予防につなげていきたいと考えております。総予算約2億円を投じて1年をかけ、抹茶摂取の介入前後において、被験者への各種認知機能検査、血中バイオマーカー測定、血中動態分析、脳イメージング(fNIRS, アミロイドPET)、睡眠調査など、これまでにない総合的な面からの解析を実施する世界で初めての研究です。

なお、本臨床試験には上述の3社の他に、医療法人社団創知会(朝田隆理事長)、国内大学医療機関が参加します。さらに世界初のアルツハイマー型認知症の治療薬「アリセプト」の開発者である杉本八郎同志社大学客員教授、および医療統計の専門家もアドバイザーとして本研究に参加します。

 

【研究グループ】
・株式会社伊藤園
・株式会社島津製作所
・株式会社MCBI
・医療法人社団創知会 朝田隆 理事長
・杉本八郎 客員教授(同志社大学)
・国内大学医療機関

<用語の説明>

テアニン
茶葉に含まれるアミノ酸の一つで、お茶の旨み成分です。テアニンは遮光されて育てられた茶葉(抹茶や玉露)に特に多く含まれています(通常緑茶の2~4倍)。また、テアニンの生理効果としては、抗ストレスの効果、睡眠の改善効果、リラックス効果、神経細胞を保護する効果などが近年臨床研究によって確認されています。

カテキン
茶葉に含まれるポリフェノールで、茶の渋みの主成分です。カテキンの生理効果としては、抗酸化作用、抗ウイルス作用、コレステロールを下げる作用、血糖の上昇を抑える作用などが研究で確認されています。

軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment
アルツハイマー病など認知症の前駆状態です。物忘れは目立つものの、日常生活には支障はありません。MCIの40%が4年後にアルツハイマー病などの認知症を発症すると言われています。

プレMCI
アルツハイマー病や軽度認知障害(MCI)の発症には至っていないが、病理やバイオマーカーに基づいて病気の前段階にあると考えられる状態です。臨床症状はなく認知機能に異常はないですが、アミロイドβ沈着が始まっている状態といえます。

fNIRS functional Near-Infrared Spectroscopy)(エフ ニルス)
生体への透過性が高い近赤外光を用いて,血流量の変化を多点で計測し画像化する脳機能イメージング装置です。脳の機能を可視化する技術の中でもfNIRSは自然に近い安全な環境下で簡便に脳の活動状態を測定できます。

アミロイド PET
アミロイド PET 検査は、脳内に蓄積したアミロイドβを可視化する PET(陽電子放射断層撮影法)を用いた画像検査です。

アミロイド β
アミロイドβ沈着(老人班)がアルツハイマー病の病理的病変です。アミロイドβは神経細胞毒性を示し、アミロイドβの産生および蓄積の異常がアルツハイマー病の発症に深く関係しているといわれています。