株式会社伊藤園(社長:本庄八郎 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、名古屋市立大学大学院医学研究科の岡嶋研二教授らとの共同研究で、コーヒーポリフェノールの一種であるクロロゲン酸による、マウスの認知機能の改善を観察しました。これはクロロゲン酸が、記憶や学習といった認知機能の低下を抑制するホルモンの一つである「インスリン様成長因子-Ⅰ」の産生を促進することによるものだと考えられました。この内容を、5 月 3 日(土)に女子栄養大学(埼玉県)において開催された第 62 回日本栄養・食糧学会大会で発表しました。
【研究の背景】
これまでにも、コーヒーの飲用は、高齢者の認知機能の低下を抑制することが知られていました。しかし同時に、コーヒーの主要な成分の一つであるカフェインの摂取は、認知機能低下を改善しないことも判明していました。したがって、コーヒーの飲用による認知機能低下抑制は、カフェイン以外の成分が重要な働きをしているものと考えられていました。しかし、コーヒー中のどの成分がどのように効果を発揮しているのかについては長く不明でした。
【研究の詳細】
今回、コーヒーポリフェノールの一種であるクロロゲン酸に注目し、クロロゲン酸、普通のコーヒー、クロロゲン酸を多く含むコーヒーの 3 種を、マウスに 14 日間摂取させて、認知機能への影響を研究しました。
その結果、クロロゲン酸、クロロゲン酸を多く含むコーヒー摂取の 2 群でのみ改善が認められました。またこれらの 2 群では、記憶を司る領域である脳の「海馬」のインスリン様成長因子-Ⅰ濃度が増加しており、これはクロロゲン酸が知覚神経を刺激することによるものだと分かりました。このことから、クロロゲン酸による認知機能の改善は、クロロゲン酸が知覚神経を刺激し、インスリン様成長因子-Ⅰの産生を促進することによると考えられました。
これらの研究から、クロロゲン酸やクロロゲン酸を多く含むコーヒーの摂取により、ヒトにおいても認知機能の向上効果が期待され、現在研究を進めています。