茶殻リサイクル
システムの
開発背景・秘話

「茶殻リサイクルシステム」の誕生背景・秘話についてご紹介します。
また開発者のインタビューも掲載しています。

茶殻リサイクルに立ちはだかる
腐敗・運送・保存の壁

Episode 1

「お~いお茶」の生産量と
比例して増加する茶殻の排出量

どんどん生産量が増えていく「お~いお茶」と共に茶殻の排出量も増加していきました。茶殻には多くの有効成分が含まれており、堆肥や飼料以外でも活用できるのでは、と考え茶殻のリサイクル研究に着手しました。

Episode 2

茶殻はリサイクルに不向き?

工場から排出される茶殻の水分含有率は85~95%と高く、また、温度も高いため、そのままでは非常に腐敗しやすいという問題点があります。

Episode 3

リサイクルするために消費する
余計なエネルギーがもったいない!

腐敗しやすい茶殻をリサイクル素材として活用するには、乾燥などの前処理が必要でした。しかし、乾燥には、膨大な設備費用や燃料資源(石油やガスなど)の消費がともないます。また、茶殻を炭化させて活用する方法も考えられますが、炭化も乾燥と同様に膨大な設備費用や燃料資源(石油やガスなど)の消費がともないます。

Episode 4

伊藤園独自の
リサイクル技術開発に成功

1・2のような状況下で、伊藤園は茶殻の輸送形態や温度など、保存条件を変え、季節ごとにテストを行い、ついに2001年、水分を含んだ状態の茶殻の腐敗を抑え、輸送・保存・製品に配合する技術の開発に成功しました。

Episode 5

第1号の茶殻リサイクル製品誕生!

水分を含んだまま茶殻を原料の1部として配合した消臭効果がある茶配合ボードは茶殻リサイクル製品の基礎となっています。
茶殻製品には、消臭・抗菌効果などの付加価値があり、従来のリサイクル技術とは違うアップサイクル製品になります。

※アップサイクルとは
サスティナブル(持続可能)なものづくりの新たな方法論のひとつで、従来のリサイクル(再循環)と異なり、単なる素材の原料化やその再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを、最終的な目的とするもの。

第1号茶殻リサイクル製品
お茶入り畳「さらり畳」

茶殻リサイクルシステムに
込めた想い

茶殻リサイクルシステム開発担当者

株式会社伊藤園 中央研究所

佐藤崇紀

当時を振り返って最も大変だったことはなんですか?

すべてが初めての経験であり、大変なことばかりでした。
大学院を修了してすぐの新入社員の時に「茶殻リサイクル」の研究を任せられました。当時は、祖母が畳の掃除に茶殻を使用していたこと、掃除の後のお茶の香りが清々しかったことから、「おばあちゃんの知恵袋」のような発想で茶殻を畳にリサイクルすることを思いつきました。 しかし、新入社員の安易な考えで研究に着手したものの、製品化までは大きな壁がたくさんありました。
最初の課題は、畳について何も知らなかったことです。「畳に茶殻をリサイクルする」ことを思いついた後に、畳の構造・部材・製造方法などを勉強しました。畳屋さんに見学に行ったこともあります。当時、畳屋の店先で見学を希望し、熱心に見ていたら、「うちは従業員を雇わないよ」と言われたこともあります(笑)

次の課題が、茶殻がすぐに腐敗することです。畳屋さんの見学や様々な情報収集を行い、茶殻を畳の部材であるインシュレーションボードに配合する研究に着手しました。当時、茶殻が数日で腐敗することも知らずに、実験室でボードの製造試験を行っていた時に、金曜日の夕方に茶殻を実験台に放置していたところ、月曜日にはカビが生えて、臭気を放っていました。そこで、工業製品にリサイクルするためには、茶殻の長期保管が必要と考え、まずは茶殻を乾燥させることを考えました。茶殻の乾燥は確かに有効ですが、調べてみると茶殻10tの乾燥に約500ℓの灯油を使用し、それにともなう二酸化炭素排出量は約1.3tとなります。これでは何のためのリサイクルなのか分かりませんし、コストもバカになりません。「おばあちゃんの知恵袋」という日本人の‟もったいない精神”から始まった研究だからこそ、“とことんもったいない”レベルまで追究しようと考え、二次的な燃料を一切使わずに済む、水分を含んだままでリサイクルできる方法の開発に着手しました。

第三の課題が、腐敗しやすい茶殻をそのまま長期保管する技術です。実験室レベル(1kg単位)で腐敗しやすい茶殻の輸送形態や温度など、保存条件をいろいろ変えて試行錯誤の末、含水のままの保存することに成功しました。同時にインシュレーションボードに配合する技術も確立しつつあったため、輸送試験をしてみました。
当時、調子にのって、いきなり4t車での輸送に挑戦したのですが、翌日“佐藤さん、カビ生えてるよ!”と連絡がきてテストは大失敗に終わりました。新入社員で大失敗をしてしまったことから、かなり落ち込みましたが、当時の部長は、笑いながら「佐藤の失敗は前向きな失敗なので気にするな、ただし同じ失敗を繰り返してはダメだぞ」という言葉を頂いたことを覚えております。
その後は、4t車輸送時の反省点を踏まえて、慎重に実験を進め、2001年に保存方法を確立しました。

1~3の課題を克服して、茶殻入りのインシュレーションボード「茶配合ボード」を開発しましたが、茶配合ボードを開発しても、市場展開する方法がわかりませんでした。住宅メーカーや建材メーカーが集まる会に持ち込んだところ、「建材分野では素人のお茶屋さんが開発した建材なんて使いたくない」ときっぱり断られるなど、そのまま時間だけが過ぎていきました。
しばらくして、別件で参加していた社内会議で営業課長に提出すると・・・“こんなおもしろい素材、もっと早く教えなさい”と怒られました(笑)
その後、 営業課長が先頭に立って、茶配合ボードの良さなどを様々な会社にPRして、アドバイスを頂きながら何度も改良を重ね、2003年7月に“さらり畳”というブランド名で本格販売に至りました。

2003年に“さらり畳”を販売するまでに、2002年9月に茶配合ボードのエコマーク取得も行いました。「伊藤園で初のエコマーク申請」「茶殻リサイクル製品のエコマーク申請事例がない」など初めて尽くしだったため、日本環境協会 エコマーク事務局の方と必要なデータ・書類をやり取りしました。

茶配合ボードの開発以降も茶殻アップサイクル製品の開発を続けておりますが、開発商品一つ一つが苦難の道のりです。しかし、その開発で出会う、様々な恩師のおかげで、壁を乗り越えることができました。これら経験や人の繋がりが、次の樹脂、茶殻建材、茶殻配合紙などの製品開発に繋がっていると思っています。

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